本ページでは、ITIL(V3-2011)をベースに解説しております。2019年にリリースされたDX・DevOps対応のITIL4についての解説は、こちらをご覧ください。

ITILはITサービスマネジメントのベストプラクティス集です。
ITサービスマネジメントとは、「ビジネス目的達成を支援するための費用対効果の高い高品質なITサービスを提供するためのマネジメント手法」と定義できます。

つまり、単にコンピュータシステムを動かすことが目的ではなくコンピュータシステムによって生まれた「サービス」を高品質に維持・提供していくことで、利用者の業務をサポートしていくのが、ITサービスマネジメントです。

ITサービスマネジメントはITライフサイクルすべてに関係する

多くの方は「ITサービスマネジメント=IT運用」と思われておりますが、ITサービスマネジメントは、企画・開発・運用・廃棄とITライフサイクルにわたるすべての分野を管理していきます。
(サービスを提供するには、企画・開発・運用・廃棄すべてが必要です)
また、管理すべき対象も、ハードウェア・ソフトウェアといったITインフラだけではなく、要員(スタッフ等の人員)や作業手順書、マニュアル、システム構成表等サービスを提供するのに必要な構成要素すべてとなります。(参考までにITILのでは、サービスマネジメントの4つのPとして、人(People)、プロセス(Process)、製品(Products)、パートナー(Partner)を管理すべき対象として定義しています。)

運用管理はコスト削減を目指すが、ITサービスマネジメントはプロフィットの増加を目指す

そして、運用にかかるコストを下げるという消極的な目的だけではなく、その一歩先にある「ITによる利益の増加(コストセンターからプロフィットセンターへ)」を達成するために、ビジネスニーズを満たす効果的・効率的なIT提供を実現することを目的としています。

 ITサービスマネジメントは、IT運用の技術ではなく、IT提供側が如何にして利用者のニーズに適合したサービスを提供していくかというマネジメント手法です。そして、この考え方(視点)は、運用の現場だけに必要なものではなく、ITシステムの企画・開発やITを活用する側にも必要となるものです。

ITサービスマネジメント・ITILにおける理想的な組織構造

ITサービスマネジメントを行う際の理想的な組織としては、図のように「開発」「運用」といった技術部門と利用者部門の間を結ぶ組織として「ITサービスマネジメント部門」というようなものをつくります。そして、ここが利用者側のニーズを吸い上げ、開発・運用という技術に落とし込んでいく、またはトラブル発生時等の対応の仲介役を果たすというように、IT(技術)と利用者(ビジネス)との間を結ぶものとなるのが、あるべき姿です。
(もちろん、このような組織はいきなり作れませんので段階を追って中長期的にこのような組織構造に改革していく必要があります)

ITILは、英国政府が策定した(*)ITサービスマネジメントのベストプラクティスをまとめたフレームワークです。(*現在は英国政府と民間企業が合弁で作ったジョイントベンチャーであるAXELOSが知的財産権を保有し・管理しています。)

つまり、ITサービスマネジメントを行う際に「こうすると良い」という理想的なお手本であり、ITIL自体が「やるべきこと」ではありません。
したがって、「ITIL準拠」「ITIL導入」という表現は正しい表現ではありません。
ITサービスマネジメントを行う際のヒントやノウハウ集としてITILを参照するというのが、正しい活用方法です。

ISO/IEC20000は、ITILを元に作成されたITサービスマネジメントの国際標準規格です。
つまり、ITILという「理想的なお手本」の中から「最低限これはやるべき」という内容を抜き出したものです。
ISO/IEC20000は認証制度がありますが、我々としては、認証を取ることを目的とするのではなく、「ITサービスマネジメント実施の最初のゴール」を「ISO/IEC20000の基準を満たす」ことを推奨しております。
つまり、ITILという「理想論」を改善活動のゴールにすると、非常にハードルが高く、また費用対効果等を考えると現実的ではありません。
しかし、ISO/IEC20000は「最低限やるべきこと」ですので、実現可能性が高い内容であり、また基準を満たすための具体的な方法までは規定しておりませんので、きちんと解釈して自組織に当てはめていけば「今まで行ってきた改善活動の延長線上にある目標」として、比較的スムーズに達成が可能なものです。
また、我々のこれまでの経験上ISO/IEC20000の要求事項を満たせるレベルまでサービス品質及びスタッフの能力が上がってくると、次の課題が見えてきます。そして、その課題を解決するためにITILを参照にするという活動を繰り返すことで、ITILの言う理想像に近づけていくことが可能となります。

利用者にとって満足度の高い、そして組織の目的達成を支援するための効果的効率的なITサービスを実現するために、ぜひともITサービスマネジメントの考え方を理解し、改善活動にお役立てください。

弊社では、ITサービスマネジメントを実現するための組織体制構築や改善活動などにおいて、ITに強い経営コンサルティング会社として、総合的なご支援をおこなっております。

ご相談・ご質問はいつでもお気軽にお寄せください。

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