ITILファンデーション(バージョン5)認定試験は、ITIL4ファンデーション認定試験の後継資格として登場した認定資格です。本記事では、両資格のシラバスと試験構成を比較し、何が変わったのかを解説します。
※一般的には「ITIL5」「ITIL5ファンデーション」と呼ばれていますが、本記事では正式名称の「ITIL(バージョン5)」もしくは、「ITILファンデーション(バージョン5)」を使用しています。
ITIL4ファンデーションとITILファンデーション(バージョン5)の試験構成を比較すると何が変わったのか
ITIL(バージョン5)は、従来のサービスマネジメントの枠組みを発展させ、デジタルプロダクトおよびサービスマネジメント(DPSM)を対象とした新しいフレームワークです。
ITIL4ファンデーション認定試験とITILファンデーション(バージョン5)認定試験は共通する部分も多くありますが、試験構成を比較すると出題比重や学習範囲に大きな違いがあります。
最大の違いは、ITIL4ファンデーション認定試験が管理プラクティスを中心に学ぶ構成だったのに対し、ITILファンデーション(バージョン5)認定試験ではデジタルプロダクトおよびサービスマネジメント(DPSM)全体を理解する構成へと変化した点です。
以下では、両資格の出題構成を比較しながら、ITILファンデーション(バージョン5)認定試験で何が変わったのかを解説します。
ITIL4とITIL(バージョン5)の試験構成比較
以下の表は、各試験のシラバス比重を40問の試験問題数に換算したものです。
| 試験カテゴリー | ITIL4ファンデーション | ITILファンデーション(バージョン5) | 主な変化 |
|---|---|---|---|
| 主要な用語と定義 | 7問(17.5%) | 12問(30.0%) | 基本概念・共通言語の重要性が向上 |
| プロダクト/サービスマネジメントの4つの側面 | 2問(5.0%) | 4問(10.0%) | AIやPESTLE要因などを含む幅広い視点を重視 |
| バリューチェーン/ライフサイクル | 2問(5.0%) | 4問(10.0%) | 新しいライフサイクル活動モデルを導入 |
| バリューシステム(原則・ガバナンス等) | 7問(17.5%) | 16問(40.0%) | ITIL(バージョン5)の中核領域 |
| 管理プラクティス | 22問(55.0%) | 上記に統合 | 個別プラクティス中心から全体最適へ |
| バリューストリームの特定・管理 | - | 2問(5.0%) | ITIL(バージョン5)で新規追加 |
| ITILとAI | - | 1問(2.5%) | ITIL(バージョン5)で新規追加 |
| 他のフレームワークとの連携 | - | 1問(2.5%) | DevOps、PRINCE2などとの連携を重視 |
| 合計 | 40問(100%) | 40問(100%) | - |
※問題数はシラバスの比重から40問換算した参考値です。両試験のシラバスの出題分野分類には相違がありますので、上記の表は弊社の判断で比較できるよう再整理したものです。
ITIL4からITIL(バージョン5)への主な変化
1. 「管理プラクティス中心」から「システム全体の理解」へ
ITIL4ファンデーション認定試験では、インシデント管理や変更実現(変更管理)などの管理プラクティスが試験全体の55%を占めていました。
一方、ITILファンデーション(バージョン5)認定試験では、個々のプラクティスそのものよりも、それらがデジタルプロダクトおよびサービスマネジメント(DPSM)の中でどのように連携するのかという視点が重視されています。
これは、単にベストプラクティスを知るだけではなく、組織全体のサービス提供や価値創出の仕組みを理解することが求められていることを意味します。
2. 共通言語としての基本概念をより重視
ITILファンデーション(バージョン5)認定試験では、「主要な用語と定義」の出題比重が17.5%から30%へと大きく増加しています。
デジタルプロダクトおよびサービスマネジメントでは、IT部門だけでなく、ビジネス部門、パートナー企業、経営層など多様な関係者との協働が不可欠です。
そのため、共通言語となる基本概念や用語を正しく理解することが従来以上に重視されています。
3. AI時代を見据えた新しい知識領域を追加
ITILファンデーション(バージョン5)認定試験では、従来のITサービスマネジメントの枠を超えた新しいテーマが追加されています。
主な追加領域は以下の通りです。
- バリューストリームの特定と管理
- AI(人工知能)の活用
- 複雑性思考(Complexity Thinking)
- DevOpsとの連携
- PRINCE2との連携
- デジタルプロダクトマネジメントとの接続
これらは、現代の組織が直面する複雑な環境に対応するために必要な知識として位置付けられています。
4. 学習レベルの考え方
ITIL試験では、ブルームレベル(Bloom’s Level)によって出題レベルが定義されています。
- BL1(想起):知識を思い出す
- BL2(理解):概念や考え方を理解する
ITIL4ファンデーション認定試験は、
- BL1:20%
- BL2:80%
で構成されていました。
一方、ITIL(バージョン5)ファンデーション認定試験は、
- BL1:40%
- BL2:60%
で構成されています。
このことから、ITILファンデーション(バージョン5)認定試験では基本用語や概念を正確に理解することがより重視されていることが分かります。
ただし、ITILファンデーション(バージョン5)認定試験ではAI、バリューストリーム、他フレームワークとの連携など新たな知識領域が追加されているため、学習範囲そのものは拡大しています。
ITILファンデーション(バージョン5)認定試験は何を目指しているのか
ITIL4ファンデーション認定試験では、サービスバリューシステム(SVS)やサービスバリューチェーンを中心に、サービスマネジメントにおける価値共創の考え方を学びます。
一方、ITILファンデーション(バージョン5)認定試験では、その考え方を引き継ぎながら、デジタルプロダクトおよびサービスマネジメント(DPSM)の視点へと対象領域を拡大しています。
試験構成にもその変化が表れており、管理プラクティスの個別知識よりも、バリューストリーム、AI、複雑性思考、他フレームワークとの連携などを含むシステム全体の理解が重視されています。
ITIL4ファンデーションとITILファンデーション(バージョン5)のどちらを学ぶべきか?
ITIL4ファンデーション認定試験とITILファンデーション(バージョン5)認定試験は、それぞれ異なる目的を持つ資格です。
ITIL4ファンデーション認定試験は、サービスマネジメントの基本的な考え方や管理プラクティスを体系的に学ぶ資格であり、ITIL4マネジングプロフェッショナル(MP)やストラテジックリーダー(SL)などの上位資格へ進むための基礎資格としても位置付けられています。
一方、ITILファンデーション(バージョン5)認定試験は、ITIL4で培われた考え方を引き継ぎながら、デジタルプロダクトおよびサービスマネジメント(DPSM)、AI、バリューストリーム、他フレームワークとの連携など、より広い領域を学ぶ資格です。
これから初めて学習する方
・インシデント管理、サービスレベル管理等、管理プラクティスについて学びたい方は、ITIL4ファンデーション認定試験を学習すべきです。(ITILバージョン5にはこれらの詳細説明はありません)
・サービスマネジメントだけでなく、デジタルプロダクトやAIを含む現代的なマネジメントを学びたい方には、ITILファンデーション(バージョン5)認定試験がおすすめです。
すでにITIL4ファンデーションを取得している方
ITIL4ファンデーション認定資格の価値が失われるわけではありません。
ITIL4ファンデーション認定資格はITIL(バージョン5)上位資格受験時の基礎資格として活用できます。
一方で、デジタルプロダクトおよびサービスマネジメント(DPSM)やAI時代の新しい考え方を学びたい場合は、ITILファンデーション(バージョン5)との違いを効率的に学ぶ「ITIL4ファンデーションブリッジ研修」の活用も有効です。
ITIL4の上位資格取得を目指している方
ITIL4のマネジングプロフェッショナル(MP)やストラテジックリーダー(SL)の取得を目指す場合は、引き続きITIL4資格体系に沿って学習を進めることになります。(ITIL4のMP、SL資格取得者向けのブリッジ研修・認定試験が今後リリースされます)
※認定制度・移行については、こちらの記事をご参照ください。
まとめ
ITIL4ファンデーションとITILファンデーション(バージョン5)の最大の違いは、価値創出の考え方そのものではなく、その適用範囲と対象領ITIL4ファンデーションとITILファンデーション(バージョン5)の最大の違いは、価値創出という考え方そのものではなく、その対象領域の広がりにあります。
ITIL4がサービスマネジメントを中心に学ぶ資格であったのに対し、ITIL(バージョン5)はデジタルプロダクト、AI、バリューストリーム、他フレームワークとの連携を含むデジタルプロダクトおよびサービスマネジメント(DPSM)を学ぶ資格へと進化しています。
試験構成にもその変化が反映されており、管理プラクティス中心の出題から、システム全体の理解を重視する構成へと変化しています。
そのため、一般的に「ITIL5ファンデーション」と呼ばれるITILファンデーション(バージョン5)認定試験は、AI時代・デジタル時代に対応したサービスマネジメントの新しい基礎資格として位置付けることができます。
よくある質問(FAQ)
ITIL4ファンデーションの資格は今後も有効ですか?
はい。有効です。ITIL4の知識や資格の価値が失われるわけではありません。ITIL(バージョン5)でもITIL4で導入されたサービスバリューシステム(SVS)や従うべき原則などの考え方は引き継がれています。
認定試験も当面は両バージョンの試験が変更して行われます。
(ITIL4の廃止については2026年6月現在は言及されていません)
ITIL4ファンデーション取得者はITIL(バージョン5)を受験する必要がありますか?
いいえ。必須ではありません。ただし、AI、デジタルプロダクト、バリューストリームなどITIL(バージョン5)で追加された領域を学びたい場合は、ファンデーションブリッジ研修やITILファンデーション(バージョン5)の学習が有効です。
ITIL4ファンデーションはITIL(バージョン5)の上位資格取得に活用できますか?
はい。ITIL4ファンデーション認定資格は、ITIL(バージョン5)の上位資格へ進むための前提資格として利用可能です。
ITIL(バージョン5)を実務で活用するために
ITILは知識として理解するだけでなく、実際の業務や組織改善に活用することで価値を発揮します。
IT&ストラテジーコンサルティングの「ITILファンデーション(バージョン5)2日間研修」では、認定試験対策だけでなく、事例演習を通じてベストプラクティスを実務へ適用するための考え方についても学ぶことができます。
ITIL(バージョン5)を体系的に学びたい方は、ぜひ研修詳細ページをご覧ください。
