本ページでは、ITILがなぜ進化してきたのかを時代背景とともに解説し、最新のITIL(バージョン5)(DPSM)へ至る流れを紹介します。

ITILは1980年代後半に英国政府が、IT運用の品質向上を目指して策定されました。
その後、時代の変化(ビジネスとITの関係性の変化)により、進化し続けています。

■ITIL(バージョン1)
最初にITILができた時代は、まだメインフレームや専用端末(オフコン)等が全盛の時代です。この頃はIT技術も未成熟であり、専門的スキルを保有している人たちによって利用されていました。そのため、ITILも「安定したITサービスを継続的に提供するにはどうすればよいか?」を焦点としてまとめられました。
(未だにITILを「運用管理の手法」と認識されている方もいますが、それはバージョン1のイメージが強く残っているためでしょう)

■ITIL(バージョン2)
一般企業でも業務においてITが使われはじめた1990年代後半(パソコンやクライアント・サーバの概念の導入期・2000年問題が話題になっていた時代)には、「サービスデリバリ」「サービスサポート」を中心にまとめられたバージョン2が公開されました。
バージョン2では、IT部門をサービス提供組織として捉え、安定したサービス品質をどのように提供するかを焦点としてまとめられています。
(日本語化されたのはバージョン2からです。弊社もバージョン2時代からITIL研修を提供しております)

■ITIL(バージョン3)
2000年代後半(WindowsXPの時代)には、「ITは単なるコストセンターではなく、事業価値を創出する存在である。」という認識が広まり、ITILもこれまでの「業務のIT化(受け身)」から「ITが価値を提供する(攻め)」という対応を行うべくサービス・ストラテジ(サービス戦略)も含めたバージョン3へと進化しました。
バージョン3では「ライフサイクル」という視点に立ち、「サービス・ストラテジ」「サービス・デザイン」「サービス・トランジション」「サービス・オペレーション」「継続的改善」の5つの分野に業務を分けて考えるというコンセプトが市場に評価され普及しました。

■ITIL4
バージョン3のライフサイクルという考えが浸透し多くの組織が実践している2010年代後半になると、サイロ化(個別最適化)や柔軟な対応が難しい等の不具合が露呈してきて(バージョン3のライフサイクルが失敗だったわけではなく、各組織の成熟度があがってきたのが不具合と認識された原因です)、その不具合の解消やインダストリー4.0(第4次産業革命:いわゆるDX化)に対応すべくITIL4へと進化しました。

ITIL4では、IT中心からビジネス中心へ(領域の拡大)、価値共創(価値は一方通行ではなく消費者と一緒に作るもの)というコンセプトのもと、これまでのプロセスによる改善からバリューストリームによる改善、ウォーターフォールからアジャイルへといった形で大きく進化を遂げました。 これはITの開発・運用が専門家にしか扱えない特別な技術がなくとも、コモディティ化(一般化)されたツールによって実現できるようになったという時代背景の影響もあります。これにより従来から認識されていた運用管理中心のITILを期待していた人々からは戸惑いの声もあり、しばらくはITIL V3を継続利用する組織も少なくありませんでした。(実際に、ITIL4の方向性に違和感を持ち、ITIL研修の受講や認定資格取得を見送る企業も見受けられました。)
その後のコロナ禍において、リモートワークやクラウド利用、自動化の推進が加速したことで、ITIL4が重視する柔軟性や迅速な価値提供という考え方への注目が高まりました。

■ITIL(バージョン5)
2020年代後半に入り、生成AIや自律型AIの普及によって、デジタル技術は単なる業務支援ツールではなく、人間と協働しながら価値を創出する存在へと進化しました。
また、企業が提供するサービスの多くはソフトウェアを中心とした「デジタルプロダクト」となり、従来の「システムを運用する」という考え方だけでは十分ではなくなっています。
こうした背景からITILは、ITサービスマネジメント(ITSM)からデジタルプロダクト&サービスマネジメント(DPSM)へと対象領域を拡大しました。これはIT部門だけではなく、事業部門やプロダクト組織を含めた組織全体で価値を創出する時代になったためです。
従来のITILが「サービスを安定して提供する方法」を中心に発展してきたのに対し、ITIL5は「組織全体でデジタル価値を創出し続ける能力を高める方法」を示すベストプラクティスへと進化しています。

このようにITILは、ビジネスとITの関係性の変化に合わせて進化を続けてきました。ITを管理するためのベストプラクティスから、デジタルプロダクトやサービスを通じて組織全体の価値創出を実現するためのベストプラクティスへ――それが現在のITILです

参考:ベストプラクティスの位置づけも変化している

ベストプラクティスの位置づけは、成功した方法を標準化して横展開する「再現すべき模範」という捉え方だけでなく、過去の知見を出発点に、目的と原則を理解し、組織や業務の状況に合わせて活用するという捉え方へと広がっています。

変化が速く、組織ごとに状況が異なる複雑な環境である現代では、過去に成功した方法が、そのまま最善策になるとは限りません。実際の結果を確認し、そこから学び、適用方法を継続的に更新することが重要です。

これは標準化を否定するものではありません。標準化が有効な領域と、状況に応じた適応が必要な領域を見分けるということです。つまり、ベストプラクティスは「従うもの」ではなく、「活用するもの」として位置づける必要があります。

このようなベストプラクティスの捉え方の変化は、ITILだけに見られるものではありません。プロジェクトマネジメントや品質管理などの分野でも、共通の標準を基盤としながら、目的、環境、組織能力に応じて必要な知見を選択・調整し、その結果から学ぶことが重視されています。

ベストプラクティスは、なぜ「成功例を再現するための模範」から「判断と学習を支える知識基盤」へと位置づけが広がってきたのでしょうか。経営学・組織論の研究、AI時代の環境変化、資格取得と実務活用の関係を踏まえて、以下のページで詳しく解説しています。

ベストプラクティスの変遷|「従うもの」から「活用するもの」へ →


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ITILは知識として理解するだけでなく、実際の業務や組織改善に活用することで価値を発揮します。

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