ITIL(バージョン5)では、これまでの(IT)サービスマネジメント(ITSM)からデジタルプロダクトおよびサービスマネジメント(DPSM)に概念を拡張しました。
本ページでは、その理由について、ITILオフィシャルブック(コア書籍)の内容に弊社の見解を含めて説明いたします。

1.「IT」から「デジタル」への進化
かつてITは物理的な業務を支える「サポートツール(ICT/IT)」という位置付けでしたが、今日では「デジタル」と「AI」が標準(デフォルト)となりました 。現代では、伝統的に非デジタルだった製品(ペンの設計や製造など)から、スマートフォン、そしてソフトウェアのような純粋なデジタルプロダクトに至るまで、「あらゆる製品とサービスはデジタルである」と定義できます。

2. 分けて考えることによる「非効率」と「価値の流出」
歴史的に、プロダクトマネジメント(何を作るか)とサービスマネジメント(どう届けるか)は別々に採用される傾向がありました。しかし、これらを切り離して管理することは現代のビジネスにおいては弊害が顕著に表れてきています。
組織のサイロ化: チーム間で異なる用語やモデルを使用するため、協働が停滞し価値が失われる。
顧客価値の毀損: 開発側と運用側が分断されることで、顧客が本当に求める価値を継続的に提供できなくなる。
価値の流出: 重複作業が発生し、デジタルやAIへの投資が測定可能な成果に結びつかない。

3.「利用」から「協働」へのマインドセット転換
Industry 5.0の時代においては、人間とテクノロジーの関係が「人がテクノロジーを利用する」ことから、「価値と成長を生み出すためにテクノロジーと協働する」ことへと根本的な転換が求められています。 このため、プロダクトとサービスをエンドツーエンドの単一のライフサイクルとして統合的に管理する「デジタルプロダクトおよびサービスマネジメント(DPSM)」が、明確さとスピードを持って成長を推進するために不可欠となっています。

製品とサービスを分けて考えることは、現代の複雑なデジタル環境においては不自然な「サイロ」を生み出す非効率なアプローチであり、ITIL(バージョン5)はこれらを「不可分なもの」として統合管理することを強く推奨しています。
このように、DPSMは単に「サービスマネジメントの名称変更」ではありません。デジタルとAIが前提となった時代において、プロダクト、サービス、人、テクノロジーを統合し、継続的に価値を創出するための新しいマネジメントモデルなのです。

~ITSMからDPSMへ ― それはIT運用の進化ではなく、組織の価値創出モデルそのものの進化である。~